作物の立場
新しい年になりました。
昨年末、ズボラな私が、いつになく大掃除に精を出しました。
なぜだか、衝動的に掃除がしたくなって。
細かいところまで、まるで狂ったように磨き上げました。
そして、これまで溜め込んでいた大量のモノを捨て(その古さと量に我ながらあきれましたが...)、物心両面を整理。
とてもきれいさっぱり。
そうしたら、物ごとがよりクリアに見えてきたような気がします。
今年から新たなスタート、そんな気分です。
私は、これからも地味に、地道に、傍流で本質を探し、見続け、
「誰のために」、「何のために」を胆に銘じながら、歩いて行きます。
さて、新年早々のタイトルは、「作物の立場」。
私が信頼し、尊敬する、朝倉玲子さんからの贈り物です。
朝倉さんは、福島県会津若松市でイタリアのオリーブオイルやパスタ、小麦などのを輸入・販売する会社「輸入販売アサクラ」の経営者です。
自身が納得する商品のみをエージェントを介さず直接扱うという、手間ヒマと苦労も半端ない方法で、私たちにおいしいイタリアの農家手作りの商品を届けてくださっています。
取材で知り合い、彼女の商品を購入した時からオリーブオイルの美味しさに目覚めた私。
今や私の毎日の食卓に、朝倉さんのオリーブオイルは欠かせないものになりました。
私は朝倉さんの商品とお人柄に、絶大なる信頼を寄せています。
彼女とのエピソードをつづった過去記事はこちら↓
http://www.ichigu-doc.jp/2010/07/post-26.html
今年も、楽しみにしている「アサクラオイル」の予約が始まりました。
さっそく1本を注文。
アサクラオイルとは、2005年からは、朝倉さんがイタリア・アブルッツ州の5ヘクタールの農園でつくる、自身の名を冠したオリーブオイルです。
その希少なオイルが、今年はオリーブの出来が悪く、例年の半分の量なのだとか。
予約は1人1本限定でした。
その待ちに待ったアサクラオイルが届きました。
早速、お味見。
鼻につ~んと抜けるさわやかな香り。
舌に喉にきりっとちょっぴり辛いような、そして、いつにもまして凝縮されたような独特の濃厚な味。
う~ん、たまりません! もしかして、今年のはいつもよりおいしい?
後日、請求書と共に『オルチョ通信12月号』(オルチョとは私が愛用している「アサクラ」定番人気商品のオリーブオイル「オルチョ・サンニータ」の名から。オルチョ=イタリア語でオリーブのツボの意味)が送られてきました。
そして、何気なく目を通した私は、朝倉さんからのメッセージに釘付けになってしまったのです。
自分では十分にわかっている、意識しているつもりでした。
でも、それはあくまで"つもり"であり、表面的なものでしかなかったことに気づかされました。
以下、『オルチョ通信12月号』から抜粋します。
......本年のアサクラオイルは半分の量。気候条件が大きく左右する果樹ですのでこれも仕方ないと思います。
楽しみにお待ちいただいた方には申し訳ございません。
しかし、オリーブの木の立場にたてばこれでよかったのかとも思います。
そもそも6月花の時期の気温が異常に高く、ゆっくり開きゆっくり結実するまで一定の時間と気温で成長するものが、高温でそれがかなわず、結果する前に暑さで枯れてしまったものが多かったようです。
その後、8月の高温にも木にかなりのストレスがあったはずです。
きつ乾燥で水がないのですから、もともとはシリア・ヨルダン辺りが発祥のオリーブは暑さには耐えられる植物ですが、百年以上の木ばかりの農園でイタリア気候モードになっている木たちにはかなり辛かったのでは、と思います。
そんな中、実が半分の量だったことが木への不安が軽減したのでは、と思います。
そしてそれら無事結果した実が秋まで実ってくれて本当にありがとう、と収穫しながら思いました。
「オリーブの木の立場にたてばこれでよかったのかとも思います」
頭を殴られ眠気を覚まされたような一撃でした。
そうなんです、つい、作物は人間の命・食を支えるためにあるのだと考え、だから当たり前のように私たちのために働いてくれるものだと思い込んでいました。
作物には、作物の「都合」があります。
彼らだって、生きるために必死なのです。
気がづけば、人間を「主語」として物ごとを捉え、考えている......。
だから、私たちはつい、作物の出来が悪かったことを嘆き、多収を望みます。
自然は思うままにならないのだとわかっているハズなのに、毎年、作物に同じ品質のものを同じだけの量要求してしまいます。
自分の思い上がりと傲慢さに気づかされました。
同時に、とても気持ちよく、胸にストンと落ちました。
そうか。
だから朝倉さんのつくるオリーブオイルはおいしいのか...!
こんな大切な、貴重で、愛情たっぷりのおいしいものをいただける私は、なんて幸せなのでしょう。
朝倉さん、いつもステキなおすそ分けを、本当にありがとうございます~!