先日、青梅市(東京都)農業委員会主催の青梅市農業経営者クラブ総会で、同クラブ会員の皆さんを前にお話をする機会を得ました。
大先輩方を前にどんなお話をしようかとあれこれさんざん悩みましたが、いただいたテーマ(豊かな農ある暮らし)について一生懸命私の思いをお伝えしました。
それでも、皆さんの反応がよくわからず、まだまだ勉強不足だと反省しつつ臨んだ懇親会でお隣に座られたのが、「かわなべ鶏卵農場」代表の川鍋芳美さん(男性です)でした。
東京で最も大きな養鶏農家であり、美味しい卵の追求と自らの手で販路を開拓してこられたパイオニア。
その川鍋さんが、ポツリと、そして何度もこうおっしゃったのです。
「先生(この呼称、とても苦手なのですが…汗)の話を聞いとって、先生の話と自分の人生とがね…自分の人生とがね……(しばらく沈黙)……(言葉に詰まりながら)……ダブって見えてね。ああ、俺のやってきたことはやっぱり正しかったなぁと思ってね」
びっくりしました。同時に、お腹の中がじわ~っとあったかくなりました。ありがとうございます、川鍋さん。私の言葉を受け止めてくださっていたのですね。
語り継がれる歴史と最高の技術をお持ちの正真正銘の篤農家・川鍋さんと少しばかり心を通わせることができたことは、私にとってこの日一番のご褒美でした。
「中途半端はしないこと、全力でいいものをつくること。そしてお客さまを大事にすること」
そんなことも川鍋さんはおっしゃいました。
かわなべ鶏卵農場は、あの高橋がなりさんの国立ファームともプリンをコラボしたり(レストラン「農家の台所」でも「さくらたまご」が大人気)、いろいろなメディアにも登場されています。息子の茂美さんという素晴らしい後継者もいます。
川鍋さんに限らず、この日会場にいらっしゃったのは、そうした農業への並々ならぬ熱い思いと高い技術を持ったトップランナーの皆さん。
東京農業といえば、不動産収入+庭先販売など直売で豊かな農業者というイメージを持っている方が多いかもしれません。地方の農山村に行くと、「東京の農家は、アパートなんか持ってて、金持ちだから」という声をよく聞きます。そこには「東京の農家はどうせ農業は片手間でしょ」という皮肉も込められているように感じます。
違うんです。
「不動産収入になんか頼らなくてよいのなら、そうしたい」
東京農家の多くの本音は、「農業を続けていきたい!」、なんです。
続きを読む "東京にこそ農業がなきゃ!"