ローズガーデン物語 第8回 市民講座(3)
お待たせいたしました。農家の長男・桜庭さんから、ローズガーデン物語(第8回)が届きました。
桜庭夫妻のハーブ市民講座も活況を呈してきたようです。
周囲は田んぼばかりの農村風景の中に、ラベンダーを中心としたハーブのガーデンができると、雰囲気も一変。
それにしても、白いパラソル一つで畑に「都会」がやってくるのですね……。
ラベンダー摘みに嬉々として興じる奥さまたちの様子に、そわそわ気になって仕方がないのが周辺の地元の皆さん。
「なんであんなことであそこに人が集まるんだ??」
写真は、ガーデンでのと記念撮影。ご参加の皆さんは確かに満足そうです。
さて、その人気の秘密やいかに?
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「ハーブを楽しむ講座」を5月上旬開始にしたのは、自前でハーブ苗を調達することと同時に、4回目の「ハーブティーのいろいろ」を自前のハーブ畑でやってみたかったからである。
1週おきの講座であるから、4回目は、6月後半になっている。
ハーブ畑では、いろいろなハーブが花盛りになっている。
なんといっても、ラベンダーが咲き誇っている。
4回目の講座当日。
ハーブ畑に白いパラソルを2本運び入れた。
テーブル代わりの幅広な板を持ち込んだ。
椅子は、廃棄処分になった学校の椅子をもらっておいたものを運び入れた。
大型の電線ドラムはすでに設置済み。
ハーブ畑に白いパラソルを広げると、風景が一変する。
田舎が、にわかに都会に変身する。
「何が、はじまるかね?」
隣家の親父さんが、垣根越しに声をかけてきた。
説明すると、ほほー、と納得して作業場に引っ込んでいった。
テーブル代わりの電線ドラムの上に、カセットコンロを置きお湯を沸かした。受講生が集まってきた。
このハーブ畑は、県道に面している。
白いポロシャツにつば広の帽子の奥様方が、20人からハーブ畑に集まって来ると、異様な景観である。
稲作で、カエルくらいしか相手にしてこなかった農家の人たちには、理解できない光景であったろう。
県道を通る車がスピードを落としていく。
みんなこちらを見ながら通過する。少し離れた家人は、庭に出てきて、こちらを見ている。
気になってしょうがない様子である。
ミントやカモマイルなど定番のハーブを摘んでお茶にした。
説明を加えながら飲んでもらった。
さまざまなハーブティーを楽しむ受講生の皆さん。さまざまな人間模様とさまざまな人生模様。
パラソルの下でハーブティーと洒落込んでも、受講生たちの目線は、みんなラベンダーに向いている。
ラベンダーがきれいに咲き揃っている。
計算通りであった。
やはりみんなラベンダーには、高い関心を持っている。
「次回、最終回は、ハーブの押し花ですので、お気に入りのハーブを摘んで押し花にするのが今日の宿題です。花だけでなく、ツルや小枝も押し花にするといいですよ」
アドバイスしたつもりだが、みんな聞いてはいない。
「先生、ラベンダーも摘んでいいですか」
我慢しきれなくなった女性が声を上げた。「それでは、摘み方を教えましょう」
私は、ハサミを腰から取り出し、
「この辺の長さで切って下さい。ラベンダーを刈り込むように摘んで下さいね」
ひとしきりラベンダーを摘んだところで、4回目の講座をお開きにした。
ラベンダーを抱えて受講生たちは、ハーブ畑を出て行く。
県道の狭い歩道を1列になって女性たちが歩いている。
周囲の人々は、受講生たちを羨望のまなざしで見送っていた。 (第9回へつづく)
色も鮮やかなラベンダーの摘み取り。癒しの香りの中での摘み取りはやはり楽しい……。