ローズガーデン物語 第6回 市民講座(1)
上の写真のタイトルは、「花園を夢見て」。
桜庭さんは、退院した奥さまと市民講座「ハーブの世界」を開講します。
小さな苗に見る夢。
苗を手にしたときから、咲き乱れる花々の園のイメージが広がっていきます。
さて、講座に集まってきた人たちはさまざま。
あ、ここでもか!と苦笑してしまう人間模様が繰り広げられていくようです。
市民講座の始まりです……
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「ハーブを楽しむ講座」の生徒募集は、市の広報に掲載され、定員の20人が集まった。
全5回の内容は、このようになっている。
1.おすすめハーブ10種類
2.ハーブの寄せ植え
3.ローズマリーのプレゼント仕立て
4.ハーブティーのいろいろ
5.ハーブの押し花
▲公民館祭りに参加したときの展示。ハーブにはさまざまな楽しみ方がある。
こ の講座の実施日は、第2、第4土曜日とした。
講座の開始時期を5月にしたのには、20人分のハーブ苗を市場から購入するのではなく、自分のハーブ畑から調 達する都合があった。
市場から購入すると金額が張ってしまう。
1ポット150円としても、10種類取り寄せると、これだけで1,500円になってしまう。
仕事柄、生徒の前に立つことには慣れている。一時期「学校開放講座」という学校を開放して、教員が行う市民講座があった。
生涯学習が、叫ばれていた頃であ る。学校の実験室や実習室を会場にすると、受講生の大人たちも昔を思い出すのだろう。
華やいだ雰囲気が漂ってなかなかいいものだった。しかし、その後県の 予算措置がなくなって、学校開放講座は姿を消した。
公民館で行う市民講座は、少し雰囲気が違った。年齢層が若干高めなようだ。
華やいだ空気では なく、バーゲンセールの会場の扉が開くのを待っている空気であった。
少しでも得したい、という尖った空気の中、簡単な開講式が行われた。
尖った空気を和ませるように老練な館長は、冗談を言って笑いを誘っていた。
初日、苗を選ばせるのも勉強。そう思って
「10種類選んで下さい」
大きな苗から運ばれていった。
自分の座席に10種類ハーブ苗を確保すると、研修室はひとまず安心した空気に変わった。
受講生に選ばせておいて、
「野菜でも花でも、苗物全般にいえることなんですけれど、大きければいい、というものではありません」
受講生の顔に緊張感が走った。
自分の選んだ苗を見て、次に残っている苗の方向に目線が動いた。我慢しきれなくなったのか、
「取り替えてもいいですか?」
年輩の女性が、小声を発した。受講生は、全員女性であった。 (第7回へつづく)
▲植物は苗の良し悪しが収穫までの半分以上を左右する。だが、苗は大きければよいというものでもない。どんなに良い苗を選んでも、育て方次第。